yukixうろうろ日記

京都在住。関西を中心にうろうろしてます。

九州旅行2日目・長崎、軍艦島クルーズ編

21日、旅も2日目。空は曇天。かろうじて雨は上がっている。
博多から長崎市内へ移動する。
宿のあさごはん。美味しゅうございます。


正午少し前、長崎市の長崎港ターミナルに到着。


そう。私にとっての今回のメインイベントは、世界遺産軍艦島上陸周遊クルーズだ。
軍艦島こと端島(はしま)は、元々は小さな瀬であり、それを周りの岩礁などともに、埋め立てを行って作られた人口の島だ。海底炭鉱として栄え、当時の最高の福利厚生を誇り、東京以上の人口が生活していたものの、1974年に閉鎖され無人島となり、風雨にさらされた建物が廃墟化し、遠目に見ると、まさに巨大な軍艦が海にぷっかり浮いているように見える。

天候や海の様子によっては、就航が出来るかどうか、就航が出来ても、上陸は出来ないかもしれない。年間上陸数が100日程度という、思った以上に上陸ハードルの高いクルーズ。
「へー。そんなに接岸するの難しいもんなの」と、この時はまだ私は軍艦島クルーズをなめていた。

今回、お世話になるツアーのデスクで受付。


雨はなんとか上がっているものの、軍艦島のある外洋は、普段から波のうねりが大きく、本日のような荒れた日は、上陸は出来ないとのこと。その為、島の周りを周遊して帰港するコースとなる。
とりあえず近くまで行けるのなら行こうよ、と即決し、受付完了。
出航時間まで、近隣のスーパー内をうろうろ。北海道フェアのゆでとうきびと海鮮巻きに心惹かれつつ、長崎ちゃんぽんのセットを自宅に送るかどうか迷っているうちに、集合時間間近。
このツアーにボルテージ上がりまくっている私は「早くッ!早く並ばないといい席ゲット出来なくなるよッ」と食い気味に集合場所へ行こうとする。私の様子に「…わかってるって」とネコ男氏は引き気味だ。だがそんなことどうでもいい。小走りで集合場所に向かう。

おお、数人並んでいるが、全然大丈夫。
右手の白い船が、私たちを軍艦島へ運ぶ船だ。軍艦島クルーズ船の中では、他社と比べると、大きい方である。
この数分後、私たちの後ろには続々と参加者が集まり、あっという間に大行列となった。ふー、早く来てヨカッタ。
数々の上陸経験者ブログに目を通し、オススメは船の右側である、と聞いていた私は、相変わらず少し引き気味のネコ男氏に「右側だよ。進行方向右側だかんね。ああ、晴れてたら2階デッキ席陣取るのに!今日とか波がやばそうやから、うーん、やはり1階席か?あ、でも雨カッパは持って来たから安心やで」等、もうネコ男氏に話しかけてるのか独り言なのか判らない状態であった。
乗船が始まり、右側前方の席を陣取る。この時、乗船スタッフの方が「後方の方が揺れにくいでーす」と言っているのを耳にしたが、「私たち、乗り物酔いとかしないから平気だもんね」と意気揚々としていた。
ほぼ100人くらいを乗せ、船は長崎港を出航。

このときは、まだこのように、波も穏やか。


三菱造船所の重工業工場の様子を見て「すごい」「でかい」「日本の発展を物語っておるね」等、感心したり、楽しく写真を撮る。

見所的には、右側の席が正解。
乗船し15分ほどすると、少しずつ、波が出始める。進行方向と波の向きにより、右側の席の窓には、波が打ち付ける。左側はそうでもなかった。

船が外洋へ近づいていくにつれ、揺れはなかなか強くなる。この頃から、周りの席から、「わぁ」「ひゃああ」等の短い悲鳴が聞こえ始める。
「海洋がうねっておりますので、この先、もっと揺れてまいります。ご気分が悪くなった方は、席前方にビニール袋がございます」と案内が聞こえる。席の前方には、エチケット袋が貼り付けてある。
このとき、私はまだ上下運動をくり返す中で「あははは。あははは。すごいねぇ。窓の外真っ白やで」と、笑顔でアトラクションを楽しむかのような余裕があった。
窓の外はこんな感じ。


この数分後、船は外洋に大いに翻弄されることとなる。私の背後に座っていた後部座席からの声が消え、皆んなが後方へ移動したことに気づく。船が荒波に向かって進んでいくたびに、グイーーーンと上昇し、一気に下降し、ドンッ!という衝撃とともに、船の細かいエンジンの振動が身体に伝わってくる。

……。

すでに私もネコ男氏も無言。ネコ男氏は膝の上に置いたリュックを握りしめて苦笑のまま顔が凍りついたような、気持ち悪い笑顔でじっと前方を見ている。
私は座席の取っ手に捕まり、今までに感じたことのない気分の悪さを自覚した。

あれ。なんか吐き気が…。

そう、アラフィフ、アラフォーの我々、生まれてはじめての乗り物酔い。
外洋の荒波をなめて、何の対策もせず、調子良く前方席を陣取り、しかも前日は博多でしこたま呑んで食べている。
比較的大きめのこの船でさえ、これなのだから、小さめの船や漁船は、さぞかし…。
そんなテンション低めとなった船内を、乗船スタッフさんたちは慣れた感じでトコトコ歩いて、乗船客の様子を見に来る。すごいよ…鉄の三半規管をお持ちなのだろう。私は船乗りにはなれそうもない。

外洋のうねりは容赦なく船を翻弄し、なんていうか、ジェットコースターにずっと乗っている感じ。(小さいのしか乗ったことないけど)

慌ててカバンの中にあるミントタブレットを取り出し、口の中に入れる。乗り物酔いしたことがない身としては、対策が全くわからない。後で調べると「横を向くな。前を見よ」とあったが、そんなことを知るよしもない。私は顔だけ横を向け、窓に打ち付ける波を見ていた。

う…うっぷ。

「皆さま、軍艦島が近づいてまいりました」とアナウンス。本来ならば、一番盛り上がるところだが、ハッキリ言おう。
いま、それどころやない!!!と心の中で叫んでいた。
いや待て。ここまで来たのだから、せめて写真だけでも。すでにスマホを取り出し撮影することすら、しんどくなって来たわけだが、窓の外の荒波の向こうに、うっすら、軍艦島(泣)。

船は、軍艦島こと端島の周りを周遊するため、向きを変える。このとき、窓の外を見ると、空を覆い隠すような、幾層もの黒っぽい海面のうねりの壁が見えた。それは泳げない私にとってはゾーッとする光景で、ここが遮ることのない吹きっさらしの荒波の中である事がわかり、この繰り返してやってくるうねりに、本当に飲まれて、暗い水底に引きこまれてしまうんじゃないかと思った。
船が向きを変えると、揺れが少しおさまった。
嗚呼、軍艦島の姿が見える…。


乗船スタッフの方が、「あれは病院で、あそこにあるのが神社です」等、説明してくれる。元気だったら、それこそ2階デッキに出て大興奮でバシャバシャと撮影していたところだ。
「ううっ。上陸したかったよぉ〜(´;ω;`)」
このとき、ネコ男氏も私も、双方が酔っていることは口にしていない。なんとなく「いま船の中でそれを言うと負ける」ような気がして。

晴天だと、また印象も違うのだろうが、この風の強い曇天の下で見る軍艦島は、なかなか衝撃的。
荒れた外洋の波が打ち付ける垂直の岸壁の上に、廃墟群がドドドーンとそびえ立つ。これは現実の景色なのかと目を疑いたくなる。
這々の体の私が撮ったこの写真からは、1ミリグラムもそれが伝わらない。この迫力は、ここで生で見るしかない。

そして、「あ。確かにこりゃ接岸出来ないな」と上陸出来ない旨を一目見て悟った。上陸出来る出来ないは、ほんとにその日次第。晴れていても波が高いと無理だし、雨でもいけそうなら上陸出来る。


船は軍艦島をぐるっと一周し、帰港方面に向かう。
また、あのジェットコースター状態が30分くらい続くのかと戦々恐々し、エチケット袋のお世話になる瞬間も近いなと涙目になりかけていた。が、帰りは、波に向かうのではなく、波に押されていく感じになるので、往路よりは揺れないとのこと。仰る通り、帰りは大きく揺れる事もなく、外の景色を見る余裕も出てきた。

私たちは、出航前、「せっかく来たし、今日上陸出来なかったら、明日の朝の便にもう一回リベンジしようか。明日はお天気も回復傾向やし」と話し合っていたが、クルーズを終え、長崎港に足をつけ、一息ついた後、お互いに人生初の船酔いにグロッキー状態であることを明かし、「明日は…もう…いいかな…」「うん」と二つ返事でリベンジ中止決定。

今回は、雨の後の出航で、天候や海のコンディションも良くなかったため、このように大揺れ状態の阿鼻叫喚ではあったが、日によっては全く揺れず、船酔いもせず上陸出来るだろう。
そこばかりは、もう来て乗ってみないと分からない。なので、数日間かけて長崎に滞在して、タイミングを見て上陸クルーズに挑むのが好ましいかと。

私たちはこのあと、グラバー園へ向かった。
続く!