神倉神社は、熊野速玉大社の境外社。
熊野の神様が、最初に降臨したと場所と伝えられています。いわば、ここが熊野速玉大社の元祖というか、そういう所らしいですね。
神倉神社の朱塗りの橋を渡ると、正面に小さなお社があります。
左手の奥へ進むと、大きな鳥居。
おぉお…。
ここです。ここです。まさにここ。
鳥居の前で、拝礼されている方がいました。
そーっと静かに、拝礼中の方の後方から、その先を眺めました。
ドーーーーーン。
そう、ここの名物というか何というか、急勾配の石段。いや、もうほぼロッククライミングのような眺め。
間違いなく、私が今まで登った石段の中では、群を抜いて急角度。
神職友人の「大丈夫ですって!」という笑顔が脳裏に浮かびました。
イヤほんとに大丈夫?ノリで言ってんじゃないの?と思いました。
雨が酷かったら、下から見るだけにするつもりでしたが、タイミングよく、パタッと雨が止みました。
ハイ、止んでしまいました。
というわけで、ビニール傘を杖かわりに、おもむろに登り始める私。ちなみに木の杖が石段の下にありますので、必要な方は借りられるといいと思います。
雨が止んだとはいえ、さっきまで降っていた石段は、たっぷりと雨水に濡れ、さらに落ち葉もあります。
足を滑らせないように、一歩ずつ確実に踏みしめながら登りました。
感覚としてはですね。後半より、この前半の石組みが非常に急勾配です。
石は揃ってるのか揃ってないのかわからない、自由にアットランダムに積んであります。
いったい誰が積んだのコレ!(※後日パンフレットを見ると、源頼朝公だそうです)
とにかく、バランスを崩してひっくり返ったら、タンコブくらいで済むとは思えない。
なので、登る人を選ぶ石段だと思います。
上から、見知らぬご婦人が下ってこられました。私は急勾配の真っ最中。
「ゆっくり!ゆっくりどうぞ!」ご婦人が上から励ますように声をかけてくれます。
私はニヤァと曖昧に笑って会釈し、ようやくご婦人のいる場所まで上がりました。
ご婦人にご挨拶し「ここすごいですね」「下りる方が大変そうですよね」「あっ。振り返らない方がいいわ。怖いから。ロッククライミングみたいなものよね。お気をつけて!」「ありがとうございます。お気をつけて」
こんな感じの会話をしました。ご婦人は傘を差したまま、ゆっくりゆっくり、足元を見ながら下りて行かれました。
吊り橋効果というか、足場も悪い場所での会話なので、ここで私が独身だとして、降りて来る相手が佐々木蔵之介似としましょう。同じような会話をするだけで、確実に好意を抱くかもです(笑)
途中の踊り場的な所に、火の神様の社がありました。
その横の方に「女坂」と呼ばれる山道が下へと続いていました。たぶん、若干緩やかな道なのかもしれませんが、パッと見たところ、雨でぬかるんでそうだったので、どんな感じなのかはわからずじまい。
中盤を過ぎると、勾配が少しだけ緩くなり、石段の幅もやや広くなります。
ひたすら登ること、約20分。
赤い玉垣と鳥居が見えてきました。
鳥居をくぐって奥へ行くと…
注連縄が張られた巨大な岩、御神体であるゴトビキ岩が現れました。ゴトビキとは、この地方の方言で、ガマガエルとの意味。
さぁ、最後の急勾配の石段を登ります。
お社の前に到着。
このような眺めが広がっていました。
新宮の街と、熊野灘。
すごい風です。汗ばんだ身体に、実に爽快爽快!
「うわぁ〜すごい」思わず声に出して写真をパチリ。
神様が一番最初にここに降りた、そんな気がしてくるような景色です。
さて、参拝を終えて石段を下り始めると、登ってくる人が、パラパラとやって来ました。
イヤ私もそうなんですが、このお天気の中、改めてようやるなぁ(笑)と思いました。地元の方っぽい初老の男性、アジア、欧米からの旅行者、女性グループなどなど。
下りる時は、やはり上りよりも怖かったです。
特に急勾配の箇所は、もう近年まれに見る集中力を我が脳味噌と筋力に全力投入しました。下りる間は無我の境地。ひたすら下りる行為しか考えられず。
石段に対して真下を向かず、体を横向きにして足場を確保しつつ、落ち葉で滑りそうな石を避けて、時には斜めにコースを取り…とにかく思いつく全ての手段を取りました。もう、杖代わりのビニール傘の先っぽが削れるんじゃないかと。
途中、60代後半くらいのご夫婦と挨拶しました。今度は私が下りる側、ご夫婦が登る側。
旦那様は、奥様に声をかけながら、サクサク登ってはりました。
「いやぁ、すごいところですねココ」「ごゆっくり。滑りやすいのでお気をつけて!」
奥様は少し下を、腰を低くしてそろそろと登ってはりました。怖い!という気持ちが伝わってきます。
奥様ともご挨拶しつつ「下りる方が大変かもしれないな。大丈夫かな」とちょっと心配になりました。
石段下から遥拝出来るようにもなっているので、決して無理はしない方がいいと思います。
しかし、頂上のゴトビキ岩のエリアは、本当に気持ちいいし、達成感がすごいです。
私のような体力ナシ根性ナシでも、マイペースに行けば登れましたので、オススメです。
行き交う見知らぬ人々と、ちょっとした交流もできますし。
急勾配の石段は怖かったし、上ったり下りたりしている最中は「もう来ないだろうな」と思ってました。
しかし、ブログの記事を書いていると、不思議と「またこの石段上ったり下りたりしたいな」と願ってる自分がいました。
「クセになる」そんな感じの場所でした。
熊野速玉大社を出発し、次の目的地、熊野那智大社と飛瀧神社へ向かいます。
その4へ続く!