雨がしとしと降る中、車で京都市内へ。
右京区の山の中へ向かいます。
久しぶりに通りかかった福王子神社のある交差点。ここを過ぎると、道は少しずつ登り坂となり、山の中へ分け入って行きます。
しばらく山の中を走ると、山の中の集落が見えてきます。瓦屋根の質実剛健な、落ち着いた雰囲気が漂っていました。綺麗だな、と思いました。
この辺りは、栂尾(とがのお)と呼ばれる地域で、古来より紅葉の名所として有名です。
高山寺(こうさんじ)の駐車場に到着しました。
オンシーズンは有料ですが、今はオフなので無料。
霧雨が降っています。
駐車場からすぐに右手に、高山寺への裏参道があります。左の道路の向こうは清滝川。昨日からの雨で、水は茶色く、轟々とうねるように流れていました。
傾斜のある石段を上がります。2、3分あれば上まで行けます。
境内。高山寺の背後にある山からの水が、勢いよく流れています。
朝9時に到着したので、人の気配はありません。
国宝、石水院。
この看板でお気づきですね。
そう、ここの宝物のひとつ。世界的にも知られる「鳥獣人物戯画絵巻」のお寺です。
ずっと来てみたかったので、嬉しいです。
いざ中へ。
正面の建物で受付を済ませ、そのまま奥へ。
受付のあたりに「写真撮影はご遠慮下さい」という張り紙がありましたので、中は写していません。
ただ、ネットでは「聞いてみたら撮影してもいいとの事だった」という記事もあったので、その都度、状況が変わるのかもしれないので、聞いてみるといいかもしれません。
創建は奈良時代末期の774年。光仁天皇の勅願によって開創されました。
中興の祖である明恵上人の徳行は、皇族、公卿、武士など多くの人々の信仰を集め、「鳥獣人物戯画絵巻」に代表される多くの文化財が高山寺に集積されました。
この石水院は、明恵上人唯一の遺構。鎌倉時代の住宅建築の傑作。国宝に指定されています。
受付からの渡り廊下からすぐの板間には、善財童子の木像が、あたりを見渡すかのように置かれていました。
というわけで、いただいたパンフレットの写真を。
これは紅葉の頃の写真ですね。今日は一面が雨に濡れた緑の絵画のようでした。
続きの御座敷から、山を臨む。
こちらは冬のパンフレット写真。実際は、雨と一面の緑。私の他に誰もいません。
座って外を眺めていると、自然の音しか聞こえない。雨の音、川の音、木々が揺れる音など。どんどん心が静かになる。
国宝の空間一人占めという、贅沢な経験をさせてもらいました。
「鳥獣人物戯画絵巻」のレプリカ(と思います。本物は確か東京と京都の国立博物館にあるはず)もありました。改めて見ると、やっぱり面白い。ウサギが鹿?ロバ?に乗ってるやつが好きだな。
あと、仏師湛慶作と伝わる、鎌倉時代の子犬の像があります。湛慶さんは、先週、三十三間堂でも観音様を拝仏しましたね。こちらの子犬は、明恵上人が常々愛玩していたとか。
パンフレットの写真です。大きさは本当のちっちゃい子犬くらい?かと。これは確かに可愛いです。撫でたくなる。
受付近くに色々とグッズなども販売されていますが、これがもう、なかなかの充実具合。クリアファイルや絵葉書、ピンバッジやミニバッジ、手拭いにハンカチにお皿に…と「うわ!なんやこれ、欲しすぎる!」と私の中の物欲がほとばしりそうでしたが、堪えてですね…。手拭いと御朱印帳を購入しました。御朱印帳は他にも色違いがあります。
御朱印の墨の滲みを防ぐために、薄い和紙などを、挟んでくれるのですが、さすが高山寺。鳥獣人物戯画仕様の和紙でした。捨てるなんてもったいない!御朱印帳に貼りました。
石水院を出て、山の方へ上がって行きます。
実に気持ちのいい道でした。
開山堂。
すごく立派な2本の木が、開山堂エリアにありました。
山深いので、境内のいたるところ、このような立派な木がたくさん生えていました。
明恵上人は、このような山の中で、寂しかったり怖かったりはしなかったのかなと思いました。ここはすごく良いところですが、夜になると真っ暗だろうし…と、凡人である私は思ってしまうのでした。
春日明神の小祠。
金堂。ご本尊は釈迦如来像。桃山時代からありましたが、室町時代に焼失し、江戸時代に仁和寺古御堂を移築したそうです。桃山〜室町〜江戸ときて、令和の時代に私たちがここにお参りに来るという時間の感覚がすごいなと思います。
この金堂に着く直前、金堂の方から60代後半くらいの男性がやってきました。おや先客がいたぞ、と思いきや「あの、高山寺はどこでしょう?」と聞かれました。
「え?ここ高山寺ですよ」と喉まで言葉が出そうでしたがそれを抑えました。
私が来た参道以外に、山からのハイキングコースでもあるのか?とも思いました。しかし、金堂の奥は、明恵上人が修行をされた背後の、りょう伽山(漢字が変換出来ず、りょうがせん、と読みます)の深い森が広がっているのみ。
とりあえず「ここを降りると石水院の看板がありますので、そちらに行かれるとお分かりになると思いますよ」と伝えると、男性はお礼を言い、下りて行かれました。
うーん。山から来たとは考えにくいし、石水院に気づかずに、登って来ちゃったのかもですね。
一瞬、狸か狐か天狗に化かされているのでは、と思ってしまうほどの山の中なので、これはこれで面白かったです。
仏足石。
この祠の前に立つと、すごーーーく、いい香りがしました。新しい木材のいい香り。甘やかですらある。
はー、いい香りだった!と満足し、石段を登ります。
ここは明恵上人の御廟。ここに眠ってらっしゃるんですね。写真だと伝わりづらいのですが、向こうの山の方から風が抜けるような、気持ちのよいところでした。
山を下っていきます。
石水院からだと上まで行っても10分くらいなので、私のような体力に自信のない方も大丈夫だと思います。
山から流れてくる水は、澄んでいました。
苔むす木。
ちっちゃいきのこが生えています。
日本最古の茶園。明恵上人が栄西禅師から、宋より持ち帰った茶の種を贈られ、ここで栽培を始めました。ここのお茶が宇治へと伝わり、その後、日本各地へと広まったとされているそうです。
おっ、かたつむり!
紅葉の頃は、沢山の人が来られると思います。
今はシーズンオフなので、静かな空間を、たっぷり堪能させてもらえました。
さてさて。山深い栂尾から走ること15分ほどで、右京区の嵯峨野へ。
続く!