yukixうろうろ日記

京都在住。関西を中心にうろうろしてます。

因島と尾道うろうろしてた日記③怒涛の夏

これから暮らす事となる一軒家は、因島の中心部といえる土生(はぶ)地区の、商店街の近くにありました。

家の手前の路地。突き当たりが海。
徒歩1分で海です。
これだよコレコレ!と唸りました。

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奥に向かって狭くなる台形の二階建てで、古い作りの民家。
お風呂はレトロなタイル作りで、ステキでした。
水場は伯母が美しく管理しており、「綺麗じゃろ。あんたも綺麗に使うてよ」と言い渡されていたので、水場の掃除は特に気合を入れてやっていました。

 

仕事にも少しずつ慣れてきて、定時通りに終わった時は、島の写真を撮りに行ったりしました。

夕焼けの海がとても美しくて、因島にいる間、たくさんの夕景を撮りました。

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夕焼けの海を、漁船が駆け抜けていく風景は、郷愁を感じずにはいられません。

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さて、7月頃から8月下旬は、繁盛期。
海水浴客や帰省客が島にやってくるので、目も回りそうな忙しさ。
最も忙しい時は、朝6時出勤、昼休憩を挟み、夜は宴会の片付けが終わる23時前まで、というのが2週間ほど続きました。
ちなみに、休みの希望は出せなかったので、料理長である伯父から「あ。オマエ、明日休みな」と言われたら休みでした。

 

この時期、料理長は完全に私の休みを忘れており(笑)、私はさすがにヘトヘトでした。
夜の後片付けを終え、シフト表を見た伯父が「ああっ、いかん!オマエ明日休め!」とようやく思い出してくれて、凄くホッとしたのを覚えています。
このとき、朝食用に作っておいた温泉卵が大量に余ったので、私はそれを8個ほどもらいました。
帰宅し、抜け殻のような疲れた頭と身体で、温泉卵4個を蛇の如く飲むように流し込み、バタンと倒れるように寝たのでした。

 

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そんな中、大量のハモが調理場に届けられました。

50尾くらいだと思いますが、伯父と板さんが見事な手際でさばいていきます。

パートさんたちが「アレじゃね」「季節じゃのう」とソワソワし出しました。

伯父がパートさんを呼び、何かを渡していました。見ると、それはハモの心臓でした。

パートさんは、まだ血もしたたるそれを受け取るやいなや、パクッと飲みこみ「精がつくんよ」とニッコリ。

毎年、夏バテ防止で、さばいたハモの心臓をみんなで飲む、というしきたりがあるのでした。パートさん方は何の戸惑いもなく、2つ3つは飲んでいました。そりゃあお元気なはずだ。

もちろん伯父と板さんも、事もなげに飲んでいます。

当然、新入社員である私も飲まねばならない空気。今でこそパワハラモラハラなど、そういうものがありますが、当時の調理場は「親方が白いと言えば黒も白」のバリバリ体育会系世界だったので、断る選択肢はありません。

伯父から「オマエも飲めぃ!」とさばきたての血のしたたるハモの心臓を受け取り、固まる私。

大きさは2、3センチくらい。パートさんが「一気にいくんよ!バヤリスオレンジに入れて飲んだらええが」と提案してくれますが、ハモの血と心臓エキス入りバヤリスオレンジを飲むのも…と想像し、汗だくになりながら、「これもお勤めじゃッ」と心の中で叫び、エイッと飲みました。

途中、喉の手前でひっかかり、「んげッ」等、呻いた記憶があります。目を白黒させながら再度流し込みました。もちろん美味しいものではないです(^◇^;)

精がつくどころか、逆に吸い取られたわ…という夏の調理場でした。

 

繁盛期という名の地獄の終盤、職場の皆でビアガーデンに行くことになりました。お疲れ様会ですね。
場所は海辺の商店街にあるビルの屋上。中華料理屋さんのビアガーデンで、屋上は広くはなく貸し切りで、有線で音楽が流れていました。
餃子、酢豚、エビチリ、肉団子、八宝菜などなど。
私は未成年だったので、アルバイトの女子高生と一緒に、バヤリスオレンジを飲んでいたと思います。
みんな、楽しそうに穏やかに笑っていて、その輪の中からフッと外を見ると、向こうには夜の海が広がっており、屋上に釣られた中華料理屋の赤い提灯が、海風にゆらゆらと揺れていました。

 

9月頃、島に台風が近づいていました。
台風が来ると、橋の通行は遮断され、フェリーなども航行しないので、島から一歩も出る事が出来なくなります。
明け方、雨戸が1枚飛んで行きました。

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台風が通り過ぎた後の空。
島の台風、なかなかの恐ろしさでした。


続く!