yukixうろうろ日記

京都在住。関西を中心にうろうろしてます。

青森紀行9・恐山

八戸から下北半島へ。

今回、青森に行く事が決まったときに、 恐山には絶対行こうと決めていました。

 

恐山とは、特定の山の名称ではなく、エリアの総称です。 高野山と一緒ですね。

カルデラ湖である宇曽利山湖(うそりさんこ) を囲む外輪山があり、辺りは活火山地帯。
今も水蒸気や火山性ガスが噴出しており、 辺りには硫黄の匂いがたちこめています。

湖畔に日本三大霊場の一つである恐山菩提寺があります。

日本三大霊場高野山比叡山、そして恐山。これでコンプリートです。

 

9世紀頃、 天台宗開祖である最澄上人のお弟子さんにあたる慈覚大師円仁上人が開基。
古くから死者の集まる山とされ、信仰されています。

 

八戸から下北半島へ向かうと、 道すがら風力発電の白く巨大な風車がぐるんぐるんと空を切っている風景がちょくちょく現れます。

感覚的にはとても遠い。まだ着かないのかなと思いながら、むつ市街地を越えて山道に入ります。


車内がなんとなく硫黄の匂いがする。その内に、目の前に恐山の青い宇曽利山湖が見えてきました。「着いた!」「 青い!なんかすごい!」 主人も私も若干テンション上がり気味に車を進めました。

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三途の川。

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好天ということもあり、ビックリするほどの美しさです。

水質は強酸性で、棲息可能な魚類はウグイのみ。 川底及び湖底からは硫化水素が噴き出している為、 このような透明度が高い水となっています。

 

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この時点で「なんて綺麗なところなのか」 と私のボルテージは更に爆上がりです。


三途の川のほとりには、奪衣婆(だつえば)と懸衣翁( けんえおう)。

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車を駐車場に停めますと、存在感のあるお地蔵様や、 お蕎麦屋さんが見えます。

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慈覚大師円仁上人。

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受付で入山料を支払い、総門をくぐります。

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左手に本堂があり、釈迦如来をお祀りしています。

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ちなみに、ご本尊は地蔵菩薩。この先に地蔵堂があります。
本堂では御祈祷中でしたので、邪魔にならないようにそっと中へ。
出入り口近くの高いの棚の上には、沢山の花嫁人形が入ったケースが。たぶん「冥婚」 というものだと思います。伴侶を得ずあの世へ旅立った息子への供養かと。時代を感じます。

 

山門をくぐります。

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突き当たりにあるのが地蔵堂

左手には授与所があります。お供えの風車やわらじはここで販売されていました。

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手水鉢の近くに、かなり個性的な亀の像を発見。

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怖いくらいですが、子孫繁栄の亀と言われています。 足元にお供えされた小銭が火山性ガスで黒く変色しています。


境内には硫黄泉の温泉小屋がいくつかあり、「男湯」「女湯」 と札が掛けられています。
受付で入山料を支払ったら、誰でも入浴可能。

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強酸性温泉のため、入浴時間は3~10分程度。 目に入ったら大変なので湯を顔に付けないよう注意という感じで、なかなか、この土地ならではの温泉かと。
なんせ炎天下で汗ダラダラ状態なので、今回はパス。 冬場だったら入ったかも。

 

振り返ったところ。

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円仁上人が唐の留学中に夢告を受け、帰国し苦労の末に恐山を開山。そこに地獄をあらわすものが108つあり夢告と符合することから、地蔵菩薩を彫り、ご本尊としたとされています。

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本堂を出て順路の矢印の方へ進むと、いよいよ地獄めぐり。

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ガスの影響で、このような荒涼とした地になっています。

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この日はそうでもありませんが、硫黄臭が強い日もあるので、要注意。人によっては倦怠感や頭痛が起きるので無理は禁物。

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大師堂。風車やわらじがお供えされています。

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恐山では、決まった場所以外はお線香や蠟燭のお供えは禁止。 ガス出てますからね。
その代わりに、風車やわらじをお供えする風習となっています。

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ところどころガスの噴出口があり、 小銭がお供えされていたりします。
(何故か数珠状のプチトマトが"まきす”に乗せられ、 噴出口近くに置いてあるのも見かけました。何か作ってるの?? 謎)

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多数の積み石があります。

「ひとつ積んでは父のため、ふたつ積んでは母のため…」 といったフレーズを思い出します。 

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参拝者が積んでいるのかな。後で主人と話していたのですが、 風や台風、雨も吹きっさらしなのに、どうして崩れないんだろう。 それが不思議。
私も3つくらい積んでおきました。

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恐山といえば、 死者の口寄せで有名なイタコさんが思い浮かべられます。
イタコさんは常駐しているわけではなく、 恐山大祭の時などに来られます。その存在も、 かなり少なくなってしまったそうです。

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この辺りでは「人は死ねば、お山(恐山)さ行ぐ」 と言い伝えられています。
近代に「恐山に行けば死者に会える」 などの多くの俗信が生まれたとされていますが、 あながち俗信ではないのではと思いました。


主人と歩きながら話していたのですが、 すごく不思議な空間だと感じていました。
「ここ、あの世っぽいな」と主人がつぶやいていました。私も同感。
特殊な環境かつ景観のせいもあるのですが…なんていうか、 すっごく静かなんです。
人もいて、風も吹いているのに、音を感じない。 

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静か。すごく静かやわ。と呟きながら歩く私。
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水子を供養しているエリア。 風車がたくさんお供えされています。

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八角円堂。

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硫黄で黄色くなっている川。

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お札を流す風習もあったんですね。

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手ぬぐいがお供えされています。

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宇曽利山湖のほとり、極楽浜にたどり着きました。

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大きな水たまりが、空を映しています。

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なんて静かで美しいところなんだろう。
極楽ってこういうところかなと深く感動しました。

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水は透き通り、光を反射していました。

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私はここでの昔の風習のひとつ「湖に向かって故人を呼ぶ」 というのをやってみました。
若干遠慮気味に小声で「お、 お父さーん」「おじいちゃーん」といった感じで。

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私の実父は2018年に病気で他界しました。当時は実母の介護でてんやわんやで、気持ちの余裕が殆ど無く、父にはつらい思いをさせていただろうと、ずっと気になっていました。

湖面が揺れてキラキラ輝いていました。

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こちらは東日本大震災の供養塔です。

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静けさと美しさに魅了され、立ち去り難い場所です。

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しばらくぼんやりしたいですが、いかんせん暑いったらない。主人と本堂のあるエリアへ戻りました。

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照り返しもすごくて、 日焼け対策をしていない主人はここでかなり日焼けしていました。


境内全てを回っていないのですが、あまりの暑さでギブアップ。
恐山は恐山菩提寺の管理となっていますが、 普通の寺院とは全く違う、異質な場所でした。
お寺というより、恐山という場所というのかな。

まさに霊場という言葉が当てはまると思う。

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近代的な宿坊もありますので、 泊りがけで温泉も利用して、ゆっくりするのもいいと思います。
私も、また青森に来る事があれば、 恐山には絶対に再訪したい。
イメージにあった「おどろおどろしさ」は全くなくて、大切な亡き人への祈りが静かにたゆたうような、 その美しさに癒される場所でした。

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