yukixうろうろ日記

京都在住。関西を中心にうろうろしてます。

かぎろひの大宇陀紀行

台風が近づいて来ている。

が、しかし、思い立ったが吉日。
そうだ、大宇陀、行こう。

大宇陀。
奈良県の東部にあり、飛鳥時代から「阿騎野」と呼ばれ、宮廷の狩り場だった。
戦国時代、秋山氏が城を築き、その麓には、城下町が栄えた。京から伊勢へと続く街道沿いの宿場でもある。
城下町は時代の変遷と共に商家町へと発展し、今も生活感が残る景観が保持されている。平成18年には「国の重要伝統的建造物群保存地区」に選定された。

というところである。
私の家から、片道計3時間の道のり。
京都駅から近鉄電車に乗り込み、東寺を横目に、いざ、万葉の地へ。


大和八木駅から、榛原駅へと向かう。
長谷寺駅あたりから、車窓はのんびりとした山里風景。空気が、より優しくなっていく。


榛原駅から、大宇陀行きのバスに乗る。
車窓からは、黄金の稲穂が実る田園、鮮やかに咲く曼珠沙華、揺れる秋桜、静かに流れる宇陀川、のんびりと憩う鴨、という「日本の原風景」と言えるような風景が広がる。

もう、この時点で、癒し度MAX。
なんていうか、空気が穏やかで、包み込むように優しくて、ようこそ来たね、という感じなのだ。
大宇陀に近づくにつれ、昔ながらの大きなお屋敷が目立ち始める。
大宇陀のバス停は、道の駅「大宇陀」にある。これはなかなかヨロシイ。バスの時間待ちの間、お買い物や、お食事、足湯(!)を楽しむ事が出来るのだ。

古い街並みが残る宇陀松山地区へ。
ちなみに、台風がこちらへ向かっているという事もあり、ひと気はまばら…いや、まばらというか、ほとんどいない。静かだ。

地酒「初霞」の蔵が見える橋を渡る。流れているのは宇陀川

松山通り。ところどころに伝統的建築群がある、という感じではなく、どちらかというと、伝統建築群の中に、普通の住宅がある。


「千軒舎」。松山地区のまちづくりセンター。台格子、虫籠窓、煙出しを備えた町家。以前は薬屋、歯科医院として使われていたものを、改修。


フランス菓子・パン「アナンダ」。休業中でした。残念!!リベンジ誓う。


「黒川醤油」の店先に、奈良県警のキャラ「ナポくん」発見。奈良に来ると、必ず探してしまうほど好きだ。このキャラグッズあったら買う。


タイムスリップしたかのような街並みが、続く。


大宇陀福祉会館。旧町役場の建物で、棟札から明治36年の建築であることは解っている。入母屋造、平屋建、桟瓦葺、平入の建物で、正面中央に切妻造りの玄関が張り出している。奈良の近代建築の典型例。


裏側。川沿いに建っている。雰囲気ありますね。


絶妙のバランスで建っているなぁと思う。


本当に、誰もいないなー。


医院。ここに通院したい。


心をぎゅっとわしづかまれた佇まいの酒屋さん。よくぞ残ってくれていた。


森野旧薬園。

享保14年。森野翁により開かれた薬園。民間の薬草園としては、日本最古。大正15年に国の史跡に認定された。園内には約250種の薬草が栽培されている。
というわけで、中に入ってみました。
真横の「森野吉野葛本舗」に入り、入園料300円を支払う。


奥に行きますと、薬園順路の表示が。


ここは、現在、吉野葛の晒し工場。山から、薬草の生成にも欠かせない清らかな水を引いている。こういった工場の雰囲気、面白い。


ここから、山へ。


おお、薬草が。


のぼっていきます。曼珠沙華の紅色が綺麗ですね。


おー。甍の波。白い馬蹄型のは、薬草園のもの。


ゼェゼェ。しんどい。
これ、真夏は無理ですな。


薬草に手を触れるべからず。持ち帰るべからず。


高台にあるので、大宇陀の町を俯瞰することができる。


ほっこりとした雰囲気でした。
小雨が降っているので、このへんで下界へ帰還。


お昼ご飯を食いっぱぐれていたので、通りにあったお店に入る。
「件(くだん)」。

可愛らしいお店で、女将さんのおっとりした感じの優しい接客で、一気に和む。とってもいい雰囲気だった。

お店の看板メニューである、大和牛(やまとうし)丼の入った定食にする。
「野菜たっぷり大和牛丼定食」。

 

野菜は、道の駅で販売される地野菜を使うので、毎日メニューが変わる。
アゴ出汁で煮込まれた、デミグラスソースのような、こっくりとした風味の大和牛丼。野菜の入った冷たいそうめん、茄子の煮物、プチトマトと鶏レバー、シシトウとじゃこをピリ辛で炊いたん、甘藷の煮物、椎茸と牛蒡と豆の天麩羅、切り干し大根のようなもの、冷やした茶碗蒸し、お揚げと鶏肉と人参と里芋の煮物。
お茶は、京都美山の茶葉だそうです。

幸せでした…。


冷たい茶碗蒸しの中に、不思議な風味のものが入っていたので、女将さんに聞いてみると、龍神の柚子のピューレだそうな。これが、冷たい茶碗蒸しの風味を、いっそう爽やかなものにしていた。

お店のご主人が、お孫さん??赤ちゃんを、おんぶひもでおんぶした状態で、お茶を入れに来てくださった。赤ちゃんのお顔も見せていただき、あったかいひとときを過ごしました。
次もここに入る!


さて、散策再開。軒先にお花を置いてらっしゃるお宅が多くて、いと美しき。


「件」さんの隣に、気になるお店を発見。
ん?ガチャガチャ?


よく見ると…。

な、なんかアバンギャルド

ハロウィン用のかぼちゃも売ってた。


「松月堂」にて、銘菓「きみごろも」を買う。長谷寺御用達のお菓子。

一見、たまごやき?と思しき和菓子。ちなみに隣にあるのは、大和八木駅で買った「大仏サイダー」。
勇気を出して「1個買い」。1個105円也。お店の方、すいません。
ふわっふわで、中は真っ白な甘みのあるメレンゲ。外の黄色は、卵黄。
美味しゅうございました。

通りの路側には用水路。歩いていると、さらさらという音が響く。


市指定文化財。「薬の館」。唐破風付きの「天寿丸」の看板。松山地区のシンボル。


工事をしているお屋敷も多いのだが、重要伝統的建造物群保存地区なので、専門の職人さん、工務店が、仕事されている雰囲気。新しく改修されたお屋敷もありましたが、木材は新しくても、伝統的な造りは、そのままにされていました。すごいなぁ。


路地を抜けて、下町通りへ。


万法寺。


下町通りも、古い建造物が多い。


松山通りに戻る。


途中、「件」さんのご主人と、ばったり再会。赤ちゃんをおんぶして、お散歩。
「また来ます」と言い、お礼を申し上げ、サラバサラバ。


赤砂利交差点を過ぎて、酒蔵通りへ。


「初霞」の久保本家。大きな杉玉。


長井百貨店。


ひときわ立派なお屋敷が見えてきた。芳村酒造である。


壜詰!夢野久作の「壜詰地獄」を思い出した。


壜詰場、全景。壜に詰める場なのね、てのがいい。


志を乃屋。和菓子屋さん。


堪能いたしました。
本当はもう少しゆっくりしたいところだが、台風も来ている事だし、そろそろおいとま。
道の駅に戻り、大宇陀ブルーベリーソフトクリームを食べながら、榛原行きのバスを待つ。


バスの中で、小さな娘さんを連れた地元の方らしき奥さんと、席の譲り合いで、ハートフルな気分になる。榛原駅で下車する際にお互い笑顔で挨拶し、別れて、最後の最後まで、「なんかいい街だなぁ」という気分で締める事が出来た。


そんなわけで、大宇陀、最高でした。
なんだろう、この癒された感。
一言で言うと、街並み以外、特にコレといって大衆受けするものもないので、好き嫌いは別れますが、私は、この街が、すごく好きになりました。


ネットなどで見ていると、地区にお住まいの方々の高齢化による建物の空き家化などが目立ったいるそうで、町おこし計画なども進められているようです。
「なぬ!空き家!?私が住む」と諸手を挙げて立候補したい気分にかられました。ここから毎日K大に通う…のは、ちょっとハードか。
宇陀松山地区は、居住空間であり、観光地区とはちょっと違う、その静けさがいい。
このまったり感を活かした町おこし活動、応援していきたいと思っています。


ひむがしの 野にかぎろひの立つ見えて かへり見すれば 月かたぶきぬ

大宇陀は「かぎろひ」が現れる地である。
厳冬のよく晴れた早朝、太陽が水平線上に現れる約1時間前に太陽光線のスペクトルにより現れる最初の陽光。
毎年、旧暦11月17日にあたる日に、万葉公園にて「かぎろひを観る会」が開催されている。
参加者は焚き火を囲み、振る舞いの笹酒や芋汁で暖を取り、人麻呂が詠んだ「かぎろひ現象」が現れるのを待つ。

いつか参加してみたい。