yukixうろうろ日記

京都在住。関西を中心にうろうろしてます。

私をゲレンデに連れてって

今日は、夜から、雨が降り出した。
昨日は良いお天気だった。とても暑かった。


というわけで、唐突ですが、寒い季節のおもひでを。


10年ほど前になるが、バイト先の仲間と、スキー旅行へ行った。
当時、私は技術がない分、力と根性だけで滑っていた。

一泊二日のスキー旅行に名乗りを上げたのは、四名。
皆、気のいい人たちばかりで、道中は愉快痛快であった。
メンバーの中に、ヤマさん(仮名)という職員さんがいた。
山男で山スキーヤーであった。常にマイペースで飄々とし、その雰囲気が大好きで、憧れのおじさまであった。
おお、そのヤマさんを交え、スキーに行けるとは!行こう行こう、ゲレンデに!

北アルプスの山々が見えるスキー場に、到着。
しばらくして、皆で、上級者コースに行くことになった。
私は阿呆なので、勢いでついていった。
確かに、途中までは、なんとか滑ることができた。
コースの終盤に、地獄が待っていた。
幅3メートルほどの急な坂道に、無数のコブ。
なんですか…?
このボッコボコは。
「ゆっくり行けば、大丈夫〜」
ヤマさんは、まさに山スキーの本領発揮。カモシカのように滑り降りていく。
他の皆も、なんとか降りてゆく。
私は、ボロボロであった。およそ30メートルほどの距離で、30回はこけた。というか、ほぼ、転がり落ちていた。
「もうだめ」「あかん」「おんぶして」等、弱音をはきまくって、なんとか下まで降りたとき、私はげっそりし、皆にも心配をかけたし、もう二度と上級者コースには行かない!と決めた。


その翌年も、スキー旅行に行った。
参加メンバーは少しだけ増えて、その中には、去年と引き続き、ヤマさんもいた。
春になったら、私はバイトを辞めると決めていたのだが、まだ誰にも言っていなかった。

ゲレンデを歩き、ふと見ると、上のゲレンデに行くリフトに、ヤマさんが並んでいたので、後ろから追いつき、そのまま隣に座った。
世間話をしながら、「春になったら、アルバイトを辞めます」と報告した。
ヤマさんは少しびっくりして「えっ。そうか…さびしくなるな」と仰った。

銀世界、晴れた青空、雪をかぶった木々。
リフトよ、このまま天まで昇れ。

そして、たどり着いた先は、上級コースであった。

なんですか…?
この角度は。
下のゲレンデが、すごく遠い。ひとが豆粒のようだよ。嗚呼。
あれ?私、去年、なんか、似たようなことがあったような。
「うん。上級やで。ゆっくり行けば、大丈夫〜」
デジャヴ?
「はははは。んじゃ行くよ〜」
あっという間に、ヤマさんの紺色のスキーウェアが、小さくなっていく。
去年と違い、その日、私はまだ一度もこけていなかった。

ようし。
ヤマさん…最後に、見ててください。私の華麗な滑降を。
怖じ気づいてなど、いらりょうか!

かくして、私は、上級コースではあまり見かけないような、「足、どうかしたの?なんか、お腹いたいの?」と言われんばかりの内股エッジをたてて、結構な角度の斜面を、滑走したのであった。
結果、途中で数回こけたのだが、コブもない広い面だったので、助かった。

見てくれてましたか、ヤマさん!

下り切ったあたりで、ヤマさんは、シガレットを吸いながら、向こうの雪山をぼんやりと眺めていた。
「ん。終わった?」


お元気かなァ。
またスキーに行きたいな。