yukixうろうろ日記

京都在住。関西を中心にうろうろしてます。

スナックとびうお

雨上がりのせいか、家の周りは、うっすらと靄がかっている。
山に近いせいか、気温が低くなってくると、こういう日がちょくちょくある。

午前中から色々とぱたぱたし、夕刻、義実家にて明日用のビーフシチューを煮込んでいた。
テレビでバラエティ番組をやっていた。なにげなく笑ったとたん、でた。「ぷ」と。

さいわい、義父は別室で、そこにいたのはネコ男氏だけであった。
私自身には確実に聞こえたのだが、氏の耳に届いたかどうかは微妙な音量であった。

バラエティーを見て「あはは」と笑いつつ、私のこころの中は

あっ!やばい!聞こえた?
どうしよう、どうすればいい??
"やー、夜の管弦楽の時間デス!ごめんね"とか、明るく自己申告&謝罪しとく?
しかしだ。聞こえてなかったら、逆に恥ずかしいわ。
でも、聞こえていたら?このまま知らんぷりをしたままで、いいのか?
「あいつ、なかったことにしやがった」ってネコ男氏は思うかもしれない。
それが、長期的に見て、家庭不和に繋がったら…

「もういい俺は出ていく」「待って!」私の腕を振り切り、行き先不明の夜行列車に乗り込むネコ男氏。追いかける私。あてどなく彷徨う内に、いつしか私は北の海辺の小さな街のスナックの前で行き倒れた。そんな私を救ったのは、スナック「とびうお」のせつこママと、常連の漁師のゲンさんであった。「アンタ、行くあてがないんだったら、しばらくここで働いてみないかい」というせつこママの厚意を受け、そのまま、「とびうお」でyukixという名前を隠し、「あけみ」という名前で働くようになるのであった。そして、時が過ぎ、せつこママが、都会から来た男と蒸発してしまったため、「とびうお」は閉店。私は場末の路地に小さな店を借り、「おでんとコロッケの店 ゆきっくす」の女将として、一人、黙々とおでんとコロッケを作るのだ。幾年月が過ぎ、街に初雪の降った夜、コートの襟をたてたうらぶれた感じの初老の男が、店にやってくるのであった。「いらっしゃ…あ、あんたは…ネコ男氏!」「店の名前を聞いて、ひょっとしてと思ってな。久しぶりだな。とりあえず、ちくわとじゃがいもとツナコロッケくれ」「あ、あんたぁぁぁ!」

というような、すごく波乱万丈な展開になったらどうしよう!ていうか、せつこママとゲンさんて誰だ。
や、待て。今の「ぷ」って軽い音、実は私のスリッパが床にこすれて出た音ですよ、ってアピールしとく?(と思ってスリッパを床に滑らせてみるが、一向にそのような音は出るはずがない)
だめだーー!だめだッ!!キュッとも言やしないっつーーの!
という感じの事を、30秒くらいの間に思った。
当のネコ男氏は、「……」という感じで、テレビ画面を見つめている。

結局、そのまま、何もなかったことにした。
次回からは、すぐに「ごめんなさい」と謝っておこっと、という結論に、今、至ったところです。